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2010年10月31日(日)
『あいちトリエンナーレ2010』

『あいちトリエンナーレ2010』

最終日に日帰りで行ってきました。6時品川発の新幹線で行ったおかげで時間に余裕もあり、主要6エリア中4エリアの作品を観ることが出来ました。この4エリアは徒歩でも移動出来る距離だったので交通機関も使わず、散歩もかねてうろうろ出来たのがまた楽しかった。この区画整備は上手く出来てたなあ。この手の広域芸術祭って、とにかく移動に手間がかかって作品鑑賞の時間が減りがちだもんね。心配だった台風も早くに通過、快適な天気だったのもよかった。しかも、さあ最後は芸術文化センター内の展示だけ、となった時に雨が降り出した。今月は雨にたたられることが多かったけど、最後にラッキーが来た。

7:30には名古屋に着いていたので、まずはてくてく歩いてコメダ珈琲納屋橋店へ行き、ウワサのシロノワールを食べる。シロノワールを食べたことのあるひとたちから悉くミニを食べろと言われていたのでミニをオーダーしたのに、来たものはどう見ても普通サイズ。これ、ミニじゃないよね?とまじまじとメニューの写真と見比べる。メニューにはミニは直径9cmと書かれているが、目の前のそれはどう見ても15cm近くある。そしてミニは4カットになっているが、こちらのは6カット。しかし伝票にはミニと書かれている。会計もミニの値段でした。しかも名古屋モーニングの洗礼、コーヒーにトーストとゆで玉子迄付いてきた。前日の夕方から何も食べてなかったんでお腹は空いていて、まあ食べきりましたが朝から腹がパツパツです。

いちばん早く開く会場が9:30の名古屋市美術館だったので移動、開場迄公園を散歩。ねこと遊んだり訓練中の消防隊を見物したりする。

■白川公園エリア/名古屋市美術館
篠島とガッツリ組んだ島袋道浩『きみは魚をさばけるか? 漁村美術の現在』が面白かった。長期滞在したドキュメンタリーを、写真、映像、インスタレーションで。土地に根差して生きるひとと獲物としての魚たち、その共存がユニークに展示されていました。
ぬぬっとなったのはツァイ・ミンリャン(蔡明亮)『エロティックスペース II』。無機質な部屋が20個程並んでいて、実際に入ることが出来、内側から鍵もかけられる。狭い部屋の中にはTVモニター、ベッド、ゴミ箱。モニターにはどこかの洞窟?古墳?の内部が映っている。ははーん(笑)直接的な描写はないのにひとの気持ちをエロに染めるわー。じわじわきます。実際扉が開かない部屋もいくつかあって、中で何をしているのかと…まあ当然自分もしばらく閉じこもってみましたが(笑)
常設展示の方には、河原温さんの作品があった!そうだ河原さん刈谷市出身だったんだ。『Today』シリーズが何点かと、『カム・オン・マイ・ハウス』『私生児の誕生』。た、たしかこの2点実物で観るの初めて…朝から瞳孔が開きそうです。これは予定外だったから嬉しかったなー

納屋橋会場もそろそろ開いたかな、と通りかかった御園座の二月大歌舞伎の予告看板を見てニヤニヤしつつてれてれ歩いていると、どうやら長者町会場に近そうだと気付く。こっちを先に行ってみよう。

■長者町会場
エリアとしてはここがいちばん面白かったー。長者町繊維街に点在する廃屋や店舗内に作品が展示されています。1ビルにつき3〜5作品くらい。フッツーの古いアパートみたいな建物だったりするので、混雑しているところは入場に20分待ちとかあったようです。廃業してしまったお店の建物がそのまま残っていたり、それを再利用したカフェが出来ていたり、街の衰退と再生が混在していて活気溢れるエリアでした。網羅は出来ないと判断、目当ての作家さんの展示があるビルから攻める。
存在感があったのはナウィン・ラワンチャイクン、最近こんなの撮ってるんだーと知ることが出来たマーク・ボスウィック、ボランティアの方にヒントを教えてもらい、隠れた部分の作品も楽しめたジュー・チュンリンも面白かった。
個人的にキたのが旧玉屋ビル。家に何故かある大量生産品…木彫りのヒグマとか、般若のお面とか、いろんな容器のパッケージ。それらをやすりで擦って擦ってなんだかぼんやりした存在にする青田真也作品ちょーかわいー!ちょーおもしろいー!ビルのかつて居住スペースとして使われていた一室に展示されていたことも、くらしと密接に関わっているのにあまり役に立たないものって言う曖昧さが浮き彫りになって面白かった。そして会場が爆笑の渦に包まれていた山本高之作品。こどもに歌を唄わせたり、こどもに作品を作ってもらって解説させたりする映像上映。意図した部分とどうやっても意図出来ない部分。こどもってホント面白い…て言うかこの思考の柔らかさ、もはやカオス。その不可解さを見事に引き出していました。いやーあまりにも面白いんでかなり長居してしまった…山本さんの他の作品はどこで観られるんですかー!すごい気になる。
そして面白いことに、長者町繊維卸会館のシャッターに書かれている絵は高田純次が描いたものだとのこと。随分前に描かれたものだそうです。図らずも入場を待つ行列ギャラリーの目を楽しませる展示になっていました(笑)。これ私の後ろに並んでいたフレンドリーなご夫婦がボランティアのひとに話し掛けた際に出た雑談から知りました。知らないままのひとも結構いたのでは。このご夫婦は地元の方で、会期中週末毎に足を運び、ほぼ全部の会場をまわったそう。おまつりみたいで楽しかったそうです。よかったねえ

そうそう、街中に沢山いたボランティアの方々、関わったひとは皆いいひとだったー。夏は暑かっただろうなあ、おつかれさまでした!

■納屋橋会場
映像作品メインの会場。時間の都合上フルで観られたものは少なかったですが、興味を惹かれるものが沢山。演劇的なドラマを提示した小泉明郎作品はギャラリー多かったなー。これは結末がどうなるのか気になって最後迄見入っちゃいました。
ハラビで見はぐっていた楊福東(ヤン・フードン)の作品も観られた!この展示会場はボーリング場等が入っていた複合施設だったビル。ヤンさんの作品上映場所が正にそのボーリング場だったところで、その広いスペースを真っ暗にして、35mmフィルム作品を一挙に6〜7本上映していました。映像と、映写機から発するもの以外一切光がなく、近くのひとの顔もよく見えない。この環境で観られたのは楽しかったー。孫原(スン・ユァン)+彭禹(ポン・ユゥ)の、一定間隔でバルコニーからゴミが投げ落とされるインスタレーションも面白かった。アトラクションみたいになっててゴミが飛び出して来る毎に歓声があがっていた(笑)。興味津々、かぶりつきで見てるこどもも。こういうとこからアートに興味を持てるっていいねえ

■栄エリア/愛知芸術文化センター
オアシス21の草間彌生の作品は、2日前の台風が原因で最終日を待たず撤去されていました。残念。
芸術文化センターの8Fからが愛知県美術館。ギャラリーGに直行。今回あいちトリエンナーレに行こうと決めたのは、山川冬樹さんの新作が初演されるからでした。前売りは完売、当日券もなし。まずはここから。

・山川冬樹『Pneumonia』@愛知県美術館 ギャラリーG
開演数日前に献息の募集があった。吊るされた13個の風船には吹き込まれた息の持ち主のポラロイド写真が貼られている。
まずはサウンド。水中土木作業用の潜水ヘルメットを被った山川さんが登場し、呼吸し、鼓動を聴かせる。呼吸は照明とシンクロさせてある。『黒髪譚歌』と通じるランウェイ式パフォーマンスエリアを往復する。視界が狭いようで、時々アシスタントに進行方向を矯正してもらう。
そして演劇、ドキュメンタリー要素。ヘルメットを外し、ギターを弾き、山平和彦の「放送禁止歌」を唄う。放送禁止、先刻承知、奇妙奇天烈、摩訶不思議……。人工呼吸器が現れる。私の名前はピューリタンベネット7200A、名古屋市内の病院で使われていました。私を外すと犯罪になります。そしてふたりの会話。ピューリタンベネット7200Aは歌を唄い、吊るされたギターに体当たりをして演奏もします(微笑)。なんだか人格を宿しているように見えてくる。
ブレイク、ヘルメットを被った3人目が登場。山川さんの弟、史門さんであるらしい。ふたりの会話は肺炎で亡くなったお祖父さま、食道ガンで亡くなったお父さま(ニュースキャスター山川千秋氏)の話題へと拡がる。風船を割った史門さんをきつく叱ったお祖父さまは、臨終の際人工呼吸器に繋がれていた。“息”が繋ぐ思い出、“声”を受け継ぐ肉体。
続いてインスタレーション要素。豚の肺はホルモンで何と呼ぶか知っていますか?とギャラリーに質問。ふたりが知っていた、「フワ」。フワを仕入れてくれた名古屋のホルモン屋さんを紹介し場が和む。今回の作品を発表する前にどうしてもフワ=肺を食べてみたかったと山川さん。『Pneumonia』は肺炎と言う意味だ。肺の形状、仕組み、食感を説明する。ピューリタンベネット7200Aにフワを接続すると呼吸が始まる。フワは膨らみ、そしてへこむ。まるで生きているよう。いや、生かされている。肉塊に意志はなくとも、機械はその器官を機能させることが出来る。
ピューリタンベネット7200Aは「父ちゃんのためなら エンヤコラ 母ちゃんのためなら エンヤコラ もひとつおまけに エンヤコラ」と語り出し、山川さんが「ヨイトマケの歌」を唄い出す。
そしてクライマックス。13個の風船に入った空気を山川さんが吸い込み、声を発する。ホーメイを駆使した倍音、叫び、歌。それらはループされ、会場のあちこちに設置されたスピーカーを震わせる。さまざまな声が重ねられ、時間も場所も把握出来ないような空間が立ち上がる。最後の風船を、山川さんは吸い込むことなく割る。その破裂音と同時にピューリタンベネット7200Aが停止する。器官が止まる、実際にはそこになかった筈の命が消える。ピーーーーーーーーと言う電子音が響き渡る。
…1時間くらいだったんだろうか。長くとも短くとも感じられた。音楽?舞台芸術?美術?そこにあるのは、命と言うものの凄まじさ。『4.48サイコシス』の時にも思ったけど、感動とは違う、死んではいけないと言う教訓とも違う。ただただ、生きていることは奇跡的だと言うこと。山川さんは、それをただただ見せてくれる。ひたすら、命懸けで。来てよかった…!

さてクローズ迄あと少し、残り時間で展示を一気見。不気味で最高な志賀理江子の写真+インスタレーション、ヘマ・ウパディヤイの廃材で作成されたミニチュア(と行っても広大!)街が面白かったー。そして三沢厚彦+豊嶋秀樹!三沢さんの彫刻、豊嶋さんの空間構成。弘前の『AtoZ』展以来のどうぶつたちに会えたよー!このひとたちのはドデカイ空間で見てこそなので、いいスペースで観られた、よかったー。しかも閉場寸前だったのでしばしの間ひとりじめ、うふふう。宮永愛子のナフタリン作品は入場が〆切られており入口の小品しか観られなかったのが残念。このひとまたの機会に絶対観たい、展示情報調べよう…。
閉館ギリギリ、美術館のスタッフやボランティアのひとたちが出口に花道を作っていて、拍手で送り出されました(笑)いやお礼を言いたいのはこっちの方だ!

ここで初めて地下鉄を使い名古屋駅へ。おひるは海老フライ、夜はきしめんを食べて名古屋の食も満喫したぜ。沢山歩き回ったこともありおいしく食べられたにゃー。帰りの新幹線では爆睡。いやーちょっとした遠足気分で楽しかったです。